「おもいでばこ」で広がる介護施設利用者の笑顔とコミュニケーション

特別養護老人ホーム 大井苑 様

(左から)大井苑 介護福祉士 齊藤夏奈氏(以下、齊藤氏) 施設長 岩渕英子氏(以下、岩渕氏) 介護主任 介護福祉士 小倉一樹氏(以下、小倉氏)

社会福祉法人 樹会様が埼玉県ふじみ野市で運営する「特別養護老人ホーム 大井苑」。ご利用者の人生を本人と職員が共有することで、温もりのあるケアの提供を心がけています。そうした大井苑にとって、無くてはならないものとなっているのがデジタルフォト・アルバム「おもいでばこ」です。ナラティブカフェと呼ばれる共有スペースに設置された大画面テレビに「おもいでばこ」を接続、スライドショーで思い出の数々をとらえた写真を映せば、利用者の方々に笑顔が浮かび、会話も絶えないといいます。今回は、「おもいでばこ」にまつわる数々のエピソードについて、大井苑にお話しを伺いました。

概要

「されたい介護」を理念にかかげ、温かい施設作りを目指す

一人ひとりの「ナラティブ(物語)」に基づき、ケアを実施

物語を紡いでいくために、無くてはならない「おもいでばこ」

「住み慣れた我が家」の延長を心がけたケアを提供

大井苑のアイドル犬、ゴールデンレトリバーの「ジュン」。
利用者の方々に癒しを与えている存在だ。

社会福祉法人 樹会様が埼玉県ふじみ野市で2006年から運営を開始した「特別養護老人ホーム 大井苑」は全室個室、100床から成るユニット型の施設です。慢性期疾患をかかえた高齢者の方の暮らしを支えるため、協力医療機関との連携による透析の方の受け入れや、ショートステイも行なっています。

そうした大井苑では「されたい介護」のグループ理念の下、利用者が「ついの住処」、すなわち「住み慣れた我が家」の延長として利用し、日々の生活を楽しんで頂けるような一人ひとりの思いに寄り添ったケアを心がけています。施設長を務める岩渕氏は、「利用者の方々が生まれ育ってきた我が家に居るのと変わりなく、安心して生活してもらえるように、職員一同が親身に対応しています」と話します。

利用者一人ひとりの「ナラティブ(物語)」を大切にする

アルバムも表紙が黒板になっているなど、
意匠に工夫が凝らされている

大井苑が大切にしているのが「ナラティブ(Narrative)」という考え方です。ナラティブとは英語で「物語」を意味しますが、岩渕氏は、「ご利用者一人ひとりに、今まで生きてきたその方だけの物語があります。その物語を大切にしようという想いから、利用者の今までの人生を深く知るとともに、これからの人生の一部を利用者と家族と職員が共に紡いで行けるように様々な取り組みを実践しています」と説明します。

その一例が「ナラティブノート」です。行事の写真を貼ったり、日々の出来事を本人や家族、職員が自由に書き込んだりできるノートを一人一冊用意し、入苑してからの出来事や思い出といった物語を共有できるようにしています。また、生い立ちから現在までの写真を集めアルバムを作ったりしているほか、居室には予定表や利用者の方の作品を自由に貼れる「ナラティブボード」も用意したりするなど、独自の取り組みを進めています。

物語を紡いでいくために、不可欠な「おもいでばこ」

大正モダンな雰囲気をしつらえた「ナラティブカフェ」

そうした大井苑が掲げる「ナラティブ」の考え方に基づいたケアを実践していくために、“無くてはならないもの”と、岩渕氏が語るのがバッファローのデジタルフォト・アルバム「おもいでばこ」です。

苑内の憩いの場であり、「ナラティブカフェ」と呼ばれる大正モダンな雰囲気をしつらえたカフェには、大画面テレビと共に「おもいでばこ」が設置され、苑での日常や家族との写真、施設行事など、数々の物語をとらえた写真がスライドショーで上映されています。

社会福祉法人 樹会「特別養護老人ホーム 大井苑」

社会福祉法人 樹会により2006年に開設、「気配り・目配り・心配り」をケアのモットーとして地域の福祉に貢献してきた。また、協力医療機関である富家病院との連携による透析クリニックにも対応。全国でも数少ない透析対応型の特別養護老人ホームでもあり、医療と介護を融合させた施設となっている。様々な介護への取り組みが評価され、2013年には第3回 介護甲子園で優勝している。

所在地

〒356-0054 埼玉県ふじみ野市大井武蔵野1277-1

電話

導入商品

デジタルフォト・アルバム「おもいでばこ」 PD-1000を導入

大量の写真や動画の保管、整理も簡単に実現

Wi-Fi機能の搭載でスマートデバイスからの閲覧も可能

デジタルフォト・アルバム

最大約40万枚の写真や動画の保存が可能

「おもいでばこ」は、テレビにつないで使用するデジタルフォト・アルバムです。デジタルカメラやスマートフォン、タブレットで撮影した写真や動画を簡単に取り込み、自動的に整理します。写真や動画の取り込みは、「おもいでばこ」本体にSDカードやUSBフラッシュメモリー等を挿入してボタンを一度押すだけ。また、スマートフォンからの取り込みもスマホアプリから転送する方法と、USBケーブルで直接接続する方法を選択可能です。

大井苑では2014年12月、ナラティブカフェの開設からほどなくして「おもいでばこ」(PD-100S/Wシリーズ)を導入しましたが、2016年3月には新商品のPD-1000を購入。新しい「おもいでばこ」は1TBの容量をもち、最大約40万の写真や動画などのコンテンツの保存が可能になっています。

写真や動画の整理や保存を便利に行う多彩な機能を搭載

また、「おもいでばこ」は、誰でも簡単かつ便利に、写真や動画を取り込んだり、整理したりするための数々の機能が備わっています。 例えば、取り込み済みの写真について再接続時にはとりこまない設計となっているため、同一写真の重複を防ぐことが可能です。さらに、Windows用ソフトウェアである「おもいでばこ とりこみ・かきだしツール」を利用することで、Windows パソコンに保存しているフォルダーをそのまま、「おもいでばこ」のアルバムとして取り込むこともできます。

さらに本体裏面のバックアップ用USB端子に、別売りの外付けハードディスクを接続しておくことで、電源オフのたびに新しく取り込んだ写真や動画を自動的にコピーしてバックアップするため、大切な思い出となるデータを保護します。 このほか、新しい「おもいでばこ」は高速CPUの搭載により、従来商品と比べて高速に写真・動画サムネイルのカレンダー表示ができるため、さらに多くの写真や動画を即時再生可能です。

Wi-Fi機能により、スマートデバイスでの写真や動画の再生も

「おもいでばこ(PD-1000)」は最大1TBの容量をもち、
約40万コンテンツの取り扱いを可能とする。
また、2TBの容量をもつPD-1000-Lもラインナップに揃えている

テレビ以外にも、iPhone、iPadやAndroid対応のスマホ、タブレットに対応した「おもいでばこアプリ」を利用することで、「おもいでばこ」に保存されている写真を閲覧することも可能です。

利用者に対する効果

大画面に映し出された写真が認知症の方々の記憶を思い起こす

利用者、職員のコミュニケーションも弾む

利用者の家族にとっても大切な記憶を思い起こすきっかけに

大画面に投影された写真が、楽しい記憶を呼び覚ます

ナラティブカフェに設置された大画面テレビに
「おもいでばこ」は接続され、撮影された写真が
スライドショーで再生されている

大井苑では、主にナラティブカフェがオープンしている午後の時間帯に、苑内での日常生活やイベントなどで撮影した写真を「おもでいばこ」のスライドショーで流しています。
岩渕氏は、「大井苑には、記憶を留めることが困難になっている認知症の方も、多数入居されています。認知症の方にとって、写真は様々な記憶を思い出すきっかけになるようです。これまでもアルバムなどで写真をご覧頂いていましたが、ナラティブカフェに来て「おもいでばこ」による大画面で投影される写真を見ると、さまざまな記憶がよみがえるようで笑顔になることも多く、自室で過ごしている時とは違った表情が現れています」と、その効果を話します。
また、小倉氏も「例えば4月初旬にはお花見に出かけましたが、数日経ってからその時の写真を再生しても、『行ったね、お花見』『桜がきれいだったね』『来年も行こうね』などの会話が出ることも多々あります。大画面で見る写真が、利用者の方々の様々な記憶を呼び覚ますきっかけになっていることを実感しています」と言います。

利用者どうしや職員とのコミュニケーションも活性化

大画面で再生された写真は、利用者どうしだけでなく、
職員との会話も弾ませている

「おもいでばこ」は、利用者の方々のコミュニケーションの活性化にも役立っています。ナラティブカフェの店長も担う齊藤氏は、「利用者の方々が誘い合ってナラティブカフェにいらっしゃるのですが、『おもいでばこ』の設置後、以前よりも楽しそうに会話をする姿が増えた印象があります。利用者の方どうしが、スライドショーを見ながら『見て見て、○○さんよ』『あらやだ、こんな写真、いつの間に撮ったの』など、会話が盛り上がっています」と、その様子を説明します。

加えて、職員と利用者との間でも写真が楽しい会話のきっかけになることも多いといいます。小倉氏は、「私が撮影していない写真だと、何をしていた時を撮影したのか分からないこともありますが、利用者の方自らが『これは、○○をした時の写真だよ』などと教えてくれたり、そこから会話が広がっていったりすることもしばしばです。このように職員と利用者の方々とのコミュニケーションの活性化にも、『おもいでばこ』は一役買っています」と説明します。

利用者の家族と、過去の思い出話に花が咲くことも

そして「おもいでばこ」は、過去に大井苑で過ごした入居者の方、そしてご家族にとっても、大切な思い出を留め、呼び起こす大事な役目を担っています。 「ナラティブカフェを作った背景には、お亡くなりになられた利用者のご家族も訪れられる場所も必要、という理由がありました。以前、東日本大震災で被災し、入居された方がいらっしゃいました。その方は残念ながらお亡くなりになられたのですが、ご遺族の方々が1周忌、2周忌と大井苑に立ち寄ってくれます。そこで『おもいでばこ』のスライドショーで写真を再生しながら当時のお話しをしたのですが、会話が途切れることはありませんでした」(小倉氏)

また、退居された入居者の方が、ご家族とともに来訪されることもあり、岩渕氏は「10年前の大井苑開設当初に入居、その後退居された方がいらした時には、『おもいでばこ』の写真を見ているうちに入居者の方とご家族、そして当時の現場職員だった私も含め、皆当時の記憶が鮮明によみがえり、時間を経つのも忘れるほど話は尽きませんでした」と話します。

職員に対する効果

撮影した写真の整理、印刷にまつわる負担が軽減

利用者の笑顔が増え、職員のケアに対する意識もさらに向上

いまや無くてはならないツールに

その日の「思い出」をその日のうちに再生

「おもいでばこ」は利用者と職員の笑顔を
さらに増やすツールになっているという

一方、「おもいでばこ」は大井苑の職員の業務負担を軽減するとともに、よりよいケアを行うためのツールとしても役立っています。 「ナラティブの取り組みの一環として、イベントだけでなく日常的に写真をデジカメで撮影していますが、これまではいったんパソコンに保管した後、プリンターで印刷して利用者一人一人に渡したり、アルバムに貼ったりしていました。しかし、撮影した写真はイベントなどでは数百枚に及ぶこともあり、選別や整理、印刷まで日数がかかることもありました。もちろんナラティブの実践に際して、写真の整理や印刷は大事な仕事ですが、日々のケアの合間を縫いながら作業を行うため、どうしても撮影してから印刷まで日数を要してしまっていたのです」と小倉氏は振り返る。

しかし、「おもいでばこ」によって、イベントなどで撮影した写真がその日のうちに見られるようになりました。 「午前中に出かけて撮影した写真を、午後には『おもでいばこ』で再生しながら談話することもあるのですが、利用者の皆様もとても楽しそうにされています」(小倉氏)

利用者からこぼれる笑顔に、職員もさらに優しい気持ちに

大画面で再生された写真は、紙のアルバムと違って撮影された利用者の表情がよりリアルに伝わってきます。そうしたことから、利用者の一人ひとりのナラティブを、より深く理解することにもとても有用であると岩渕氏は話します。

さらに「おもいでばこ」は、職員のケアに対する気持ちにも大きな影響を与えているそうです。岩渕氏は「『おもいでばこ』が再生する写真を見て、利用者やそのご家族から自然に笑みがこぼれています。そうした楽しそうな姿をみるたびに、職員たちもさらに優しい気持ちになっていくのが感じられます。私自身も含めて、改めて『もっと写真を撮ったり、もっと利用者の方々が楽しんでもらえたりするような取り組みをしていこう』という思いが沸き上がります。そうしたことから、職員の意識向上にも確実につながっています」と評価します。

「おもいでばこ」は、いまや“無くてはならない”ツールに

このように大井苑の利用者、職員に対してさまざまな効果をもたらしている「おもいでばこ」ですが、その役割と今後の展望について、岩渕氏は次のように総括します。

「大井苑において『おもいでばこ』は、利用者やご家族、そして職員に、これまで以上に笑顔を増やしてくれています。そして、お互いがより良いコミュニケーションを行っていくためにも、今や無くてはならないツールになっています。今後も、さらに活用の幅を広げて、もっともっと利用者の方々が喜んでもらえるような取り組みを進めていきたいと考えています」


取材後記

取材時には、自分たちが映っている写真だけでなく、職員が撮影した職員の子供の写真をスマホで見せると、まるで自分の孫を眺めているかのように笑顔になって喜ぶ方も多いとのエピソードも伺いました。今後は「おもいでばこ」の機能を活用し、デジカメだけでなく、面会に訪れた家族がスマホで撮影した写真を取り込み、その場で大画面で見せるといった活用方法もアイデアにあがっているといい、大井苑における「おもいでばこ」の活躍の場はますます広がりそうです。


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