「フリースポット導入キット」と耐環境性能無線LANアクセスポイントを採用し、屋外エリアもカバーする公衆Wi-Fiサービスを低コストで実現

下諏訪町 様

下諏訪町 総務課情報防災係主査 山口泰弘氏(以下、山口氏)、総務課危機管理室長 兼 情報防災係長 北澤勝巳氏(以下、北澤氏)、総務課情報防災係谷川秀樹氏(以下、谷川氏)

諏訪湖や下諏訪温泉、諏訪大社など、数多くの観光資源に恵まれる長野県諏訪郡下諏訪町。同町では、近年増加し続ける海外からの観光客に対するサービス向上、そして、地域住民向けの防災・情報インフラの整備を目的として、2016年4月から誰もが無料で利用可能な公衆Wi-Fi(無線LAN)サービス「しもすわFree Wi-Fi」を開始しました。今回の事例では、公衆Wi-Fiサービスを低コスト・短期間で導入できるフリースポット導入キット「FS-600DHP」と屋外設置が可能な耐環境性能無線LANアクセスポイント「WAPS-300WDP」による公衆Wi-Fiサービス構築例をご紹介します。

概要

大社といで湯の宿場町として古くから知られる観光地

海外にもその名が知れ渡る式年祭「御柱祭」

観光客の利便性向上と住民向け防災インフラとして、公衆Wi-Fiサービスを導入

古き良き宿場町の面影を残す、自然の景観にも恵まれた観光地

江戸時代末期の造りをした古民家伏見屋邸をはじめ、
町内には古の趣を感じさせる歴史的建造物が多数、軒を連ねる

長野県のほぼ中央に位置する下諏訪町は、江戸時代には中山道と甲州街道の合流する交通の要衝として多くの人々が行き交い、中山道随一の温泉宿場町として栄えてきました。その歴史は現在へと続いており、旧宿場の面影を残す温泉地として、多くの観光客を迎えています。

そうした下諏訪温泉に加え、南には、一周約16kmに達する信州で最も大きな湖である諏訪湖、北には国の天然記念物にも指定されている日本最南の高層湿原、八島ヶ原湿原を臨むなど、自然の景観にも恵まれています。

世界的にもその名を知られる諏訪大社の「御柱祭」

下諏訪町は、全国に一万余の分社を持つ諏訪神社の総本社、「諏訪大社」がある門前町としても知られています。その諏訪大社の神事として、近年、海外にも広く知れ渡っているのが、7年に一度行われる「御柱祭」です。

長野県の指定無形民俗文化財である御柱祭は、直径約1メートル、長さ17メートル、重さ10トン以上にもなるモミの巨木を山から曳き出し、人力のみで各神社までの道中を曳行、最後に各神社の社殿を囲むように四隅に建てるという勇壮なお祭りです。そのハイライトの1つが、柱を山から里へと曳き出す「山出し」で、土煙をあげ轟音を響かせながら男たちを乗せた巨木が山の傾斜を猛然と滑り落ちていく様は圧巻の一言であり、近年では、海外メディアによる取材班も訪れるようになりました。

「そうしたことから、御柱祭や木落しというキーワードを検索し、海外から下諏訪町に訪れる観光客も増えています。また、外国人観光客がSNS等に祭りの様子をアップすることで、さらに海外にも知名度が広がっています」と北澤氏は話します。

御柱祭のハイライトの1つ、「山出し」では山頂の急斜面を、男たちを乗せた巨木が土煙をあげ轟音を立てながら突き進む。その勇壮な姿は「どうせ乗るなら木落しお乗り諏訪の男の度胸だめし」と唄われるほどである

防災情報の配信強化と外国人観光客来訪に弾みをつけるためWi-Fi環境を整備

今回、下諏訪町では、海外からの観光客の満足度向上のため、町内の観光スポット5か所において、誰でも無料でインターネットにアクセスし、SNS等のサービスを利用可能な公衆Wi-Fi(無線LAN)サービス「しもすわFree Wi-Fi」を開始しました。サービス開始の背景には、観光客向けの用途だけでなく、地域の防災情報インフラの整備という側面もありました。そして、その実現に不可欠だったのがバッファロー商品を活用したWi-Fネットワークです。

下諏訪町

「中山道と甲州街道が出会う 大社といで湯の宿場まち」をキャッチフレーズに掲げる下諏訪町は古くから温泉宿場町として栄えてきた歴史を持つ。その一方で、年間を通して湿度が低い気候や物流の利便性から、太平洋戦争当時に多くの大規模工場が移転してきたことが礎となり、精密機器工業も発展。“モノづくりの町”としてもその名を知られる。

所在地

〒393-8501 長野県諏訪郡下諏訪町4613番地8

電話

0266-27-1111(下諏訪町役場)

目標・課題

アジアを中心とした外国人観光客が増加

地域防災情報インフラの整備も急務の課題に

屋外通信のための設置工事のコストがネック

外国人観光客が町内散策を楽しんでもらうための施策を検討

「政府観光局の発表によれば2015年の訪日外国人観光客数が前年比47.1%の伸びを示す中、下諏訪町においてもこの2、3年アジアを中心とした外国人観光客が増えています」と北澤氏は、町の観光動向について話します。

「しかし、単に町に訪れる観光客の数を増やすだけでなく、下諏訪町内をゆっくり散策しながら観光やイベント、食事や買い物を楽しんでもらえるような取り組みや仕組みの整備が必要であると考えていました」(北澤氏) そこで浮上したのが、誰もが無料で利用できる公衆Wi-Fiサービスでした。スマホ・タブレットにインストールすることで観光名所が表示される町歩きアプリも開発しましたが、ダウンロードするためのインフラも必要となります。「そこで、まずは観光客が自由にインターネットにアクセスし、情報を取得したり発信できたりする環境を整えようと考えたのです」と北澤氏は説明します。

住民向けの防災情報インフラの整備も急務、しかし投資対効果の面で議論に

「そもそも公衆Wi-Fiサービスの検討を開始したきっかけは、総務省が推進する『観光・防災Wi-Fiステーション整備事業』にありました」と谷川氏は話します。

「総務省では観光情報や防災情報等、地方公共団体から観光客や住民等に提供すべき情報を配信するWi-Fi環境の構築を推進しており、下諏訪町もその取り組みに乗ろうと考えていました」(谷川氏)

しかし、そこで浮上したのが投資対効果に関する問題でした。山口氏は、「観光客や住民に対して利便性の高い公衆Wi-Fiサービスを提供していくにあたり、屋内だけでなく屋外でも利用可能なインフラが不可欠です。屋外用アンテナを設置するには、支柱を建てるための土木工事が必要となります。つまり、複数個所にインフラを整備するには多大なコストが発生する一方で、大規模投資に対して十分に見合う効果を挙げられるのかが議論されることになり、なかなか踏み出すことができなかったのです」と振り返ります。

低コストで屋外通信インフラを構築可能なバッファロー商品を採用

そうしたことから、屋内に設置したWi-Fi環境から屋外にも通信エリアを拡大させるという案も検討しました。しかし当初、提案を依頼したベンダーや通信事業者からは、「屋外へもWi-Fiエリアを拡張させた場合、十分な通信速度を提供できるか確約できない」との回答を受けます。下諏訪町にとって最善な手法を模索する中、2015年10月に産業振興課観光係からバッファロー商品の紹介を受けたことが転機となります。

「長野県による公衆Wi-Fi利用に関するセミナーに観光係の職員が参加したのですが、そこで、屋外へのWi-Fiインフラ構築が低コストで可能になる商品をバッファローが提供していることを知り、早速、話を伺うべく担当者を紹介してもらったのです」と山口氏は振り返ります。

解決策

公衆Wi-Fi環境を優れたコストパフォーマンスで実現するバッファロー商品を選択

ゲートウェイ機能が評価された、フリースポット導入キット「FS-600DHP」

屋外Wi-Fiを低コストで実現する「WAPS-300WDP」

導入商品

フリースポット導入キット

エアステーション プロ
11n/g/b対応
防塵・防水 対環境性能
無線LANアクセスポイント

屋外Wi-Fiを低コストで実現するバッファローの提案を採用

下諏訪町役場や町内の観光スポットに設置された「FS-600DHP」。
ゲートウェイ機能を活用したネットワーク拡張も行われている

下諏訪町からの提案依頼を受けたのは、バッファローの関連企業でネットワークインフラ構築・保守などのサービスを行う「バッファロー・IT・ソリューションズ」。同社によって紹介されたのは、フリースポット導入キット「FS-600DHP」、そして屋外環境にも対応する耐環境性能無線LANアクセスポイント「WAPS-300WDP」でした。

同社営業部 ソリューショングループの山本浩稔氏は、「『FS-600DHP』は、公衆Wi-Fiサービス『FREESPOT』を導入するためのセットです。もちろん単体で運用できる商品ですが、他の無線LANアクセスポイントやスイッチと組合せて、より大規模なWi-Fi環境を実現できる『ゲートウェイ機能』を搭載しています。この機能を活用して屋外環境に対応する無線LANアクセスポイント「WAPS-300WDP」を増設すれば、下諏訪町様が望む公衆Wi-Fi構築を低コストで実現できると判断し、提案しました」と話します。

山口氏は、「他社の提案は、屋外用アクセスポイントを1基構築するのにも支柱の敷設などを含めて数百万の費用がかかるものでした。対して、バッファロー商品であれば、低コストかつ短期間で私たちの求める環境が実現できることが分かったのです。」と当時を振り返ります。また、「FREESPOT」にはメール認証など公衆Wi-Fiサービスに不可欠なセキュリティー対策についても万全です。下諏訪町はこれらのメリットを総合的に判断し、バッファロー商品の採用を即座に決定しました。

屋外の過酷な環境下でも安定した通信を実現する「WAPS-300WDP」

今回導入された「FS-600DHP」は、単体では最大300Mbps(理論値)のIEEE802.11n(以下、11n)に対応します。屋外用アクセスポイントとして採用した、「WAPS-300WDP」は、高い防塵性能と防水性能を持ちマイナス10℃から55℃までの環境下での動作を保証し、過酷な環境においてもWi-Fi通信を可能とする商品です。またPoE給電にも対応しており、設置の際にも電源周りの工事が不要です。さらに、「FS-600DHP」と組み合わせた場合には、本商品1台あたり最大50台のスマホ・タブレットが同時接続可能なため、観光客への快適なWi-Fiアクセスの提供だけでなく地域住民の利用や、万一の際の防災インフラとしても十二分に活用できます。

バッファロー・IT・ソリューションズの協力で設置工事も短期間で完了

(※)

2016年4月初旬の御柱祭の開催期間までをターゲットに定め、町内の観光スポット5か所への設置工事が急ピッチで進められました。谷川氏は「バッファロー・IT・ソリューションズとも事前に綿密な打合せや準備は進めていたものの、通信回線の準備の兼ね合い等もあり、実質、1週間ほどの短期間で町内5か所への設置工事、稼働確認を行わなければなりませんでした。迅速な実作業はもちろんのこと、事前のスケジュール調整でもバッファロー・IT・ソリューションズには尽力してもらい、とても感謝しています」といいます。

また、実際に工事にも携わった山本氏は、「事前の電波調査により最適な設置場所を模索する一方で、観光スポットとしての景観を損なわないよう、配線や無線LANアクセスポイントの設置には気を使いました」と振り返ります。

屋外に設置された無線LANアクセスポイント「WAPS-300WDP」。「POE給電に対応しており、配線も最小限で済むため美観を損ないません」(バッファロー・IT・ソリューションズ 山本氏)

下諏訪町 公衆Wi-Fiサービス システム構成

効果

当初想定以上の利用者を獲得、「つながらない」などのクレームも一切なし

高齢化社会の到来を見据えた位置情報サービスの実現も視野に

今後も変わらぬ優れた商品とサポートの提供に期待

「しもすわFree Wi-Fi」運用開始。快適な通信環境に利用者も順調に増加

「しもすわFree Wi-Fi」のロゴステッカーが貼ってあるエリアは
誰もが無料でインターネット接続を楽しめるようになっている

2016年4月初旬、御柱祭の開催前に無事、本番運用が開始された「しもすわFree Wi-Fi」ですが、快適な通信を実現しており「つながらない」などのクレームはまったく寄せられていないといいます。山口氏は、「Wi-Fi利用者のログを調べてみると、当初想定していた以上に活用されており、今後のさらなる利用増にも期待しています」と話します。

快適な公衆Wi-Fiサービスを実現した下諏訪町が次に見据えているのは、「FS-600DHP」に搭載された数々の機能を利用した付加価値サービスの提供です。中でも期待を寄せているのは、利用者のスマホ・タブレットからのアクセスに対して、事前に登録されたURLにリダイレクトさせられる「ポップアップ機能」の活用です。

外国人観光客がゆっくりと町内散策を楽しんでもらえるための
情報発信や、スマートデバイスからSNSなどへのスムーズな
アクセスが可能

山口氏は、「例えば、次回の御柱祭等の行事が開催される際には、同機能を使って広告やお知らせを配信したり、歴史的建造物を外国人観光客が訪れた際、多言語による説明ページを展開したりするなど、様々な施策を検討しています」と構想を明かします。

公衆Wi-Fiサービスのエリア拡大による、住民サービスの強化も構想の1つ

もう1つ、次の施策として検討しているのが、公衆Wi-Fiサービスのエリアの拡充です。谷川氏は、「諏訪湖周辺にも公衆Wi-Fiサービスエリアの拡大を検討しています。下諏訪町は2020年の東京五輪・パラリンピックのボート競技における事前合宿の候補地として名乗りを上げていますが、関係者へのアピールにもなると考えています」と話します。

一方、町内全域へも公衆Wi-Fiサービスを展開することで、住民向けの防災、情報インフラとしてもさらに活用領域をさらに広げられるのでは、と期待を寄せます。山口氏は、「公衆Wi-Fiサービスとセンサーを組み合わせた位置情報システムは構想の1つです。例えば、今後、高齢化社会を迎える中で、お年寄りの外出をサポートする位置情報の把握や、万が一の災害発生時には行方不明となった方の安否を確認したりするなど、様々な活用法が考えられます」と、将来展望を語ります。

今後も優れた商品の提供と手厚いサポートを期待

(※)

今回のプロジェクトを振り返り、谷川氏は、「バッファロー・IT・ソリューションズには、こちらからの疑問に対しても一つひとつ丁寧に説明してもらえ、不安なく導入を進められました。そうしたことから、厳しいスケジュールにもかかわらずスムーズな導入が実現できたと思っています」と評価します。

また、山口氏も提案と構築を担当したバッファロー・IT・ソリューションズ、そして商品を提供したバッファローに対して、次のように期待を述べます。

「今回の公衆Wi-Fiサービスの導入を皮切りに、今後は、さらに屋外でも利用可能なWi-Fi環境を実現していきたいと考えています。また、「ポップアップ機能」も活用することで、より利便性の高いサービスも提供していく計画です。バッファロー・IT・ソリューションズとバッファローには、これまでと同様に私たちの要望に合致した提案と充実したサポート、そして優れた商品を提供し続けて頂きたいと思います」(山口氏)

山口氏をサポートし、下諏訪市が求める公衆Wi-Fiの実現に尽力した株式会社バッファロー・IT・ソリューションズ 営業部 ソリューショングループの山本浩稔氏(写真右)


取材後記

今回、高速かつ安定した公衆Wi-Fiサービスが開始されたことで、観光客によるSNSへの情報発信が頻繁行われる一方で、地域住民の方々もWi-Fiアクセスを享受。インターネットへのアクセスによる情報の取得だけでなく、自ら下諏訪町の情報を発信する様子も多数見受けられるようになったそうです。そうした「地域住民による生の声」も、今後、観光客にとって有用な参考情報になるのではないでしょうか。


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