観光客からの要望と来訪促進を目指し、無料の公衆無線LANサービス 「アクセスフリー成田」を提供開始

成田市観光協会 様

一般社団法人 成田市観光協会
専務理事の神宮敏行氏 (以下神宮氏)

国際観光都市として成長を続ける千葉県成田市。その観光振興に努める一般社団法人 成田市観光協会は、2014年4月、成田駅から成田山新勝寺へ続く表参道を中心にホテルロビー、ショッピングセンターをはじめ、レストラン、店舗など市内各所をカバーする公衆無線LANサービス「アクセスフリー成田」を開始しました。これにより、成田を訪れた国内外の観光客がスマートフォン等を用いて簡単かつ快適にインターネットを楽しんだり、成田市の観光情報を利用したりできる環境を実現。今回は、観光地におけるWi-Fi活用の最前シーンと、その導入効果について紹介します。

概要

日本の玄関口である成田国際空港を擁する観光都市

国内だけでなく海外から多くの観光客が来訪

外国人観光客のニーズに応え、無料のWi-Fiサービスを導入

国際観光都市として成長を続ける成田市

国内でも有数の乗降客数を誇る成田国際空港を擁する千葉県成田市は、交通の要衝としてだけでなく、観光地としてもその名を知られています。全国2位の初詣客数を迎える成田山新勝寺をはじめとする数々の歴史的な神社仏閣をはじめ、春の梅まつりや成田太鼓祭、夏の成田祇園祭、秋から冬にかけてのNARITA花火大会や紅葉まつりなど、季節を通じて開催される多彩なイベントも人気で、多くの観光客を集めています。特に近年では、成田空港を利用する際の宿泊拠点として、そして、日本の歴史を感じさせる街並みや建造物を手軽に楽しめる「国際観光都市」として、外国人観光客も急増しています。

成田市の代表的な祭りの1つである「成田太鼓祭」。各都県を代表する和太鼓や日本の伝統音楽、伝統舞踊のチームが成田山と表参道を賑やかに盛り上げる日本屈指の太鼓祭である

観光の振興促進にITを積極活用

そうした成田市の観光振興に努めているのが、成田市観光協会です。約450の加盟会員から構成される成田市観光協会は、年間を通しての安定的集客と、来訪者を満足させる観光地づくりを目指し、各種イベントの企画運営、PR活動など、多方面にわたる取り組みを続けてきました。特に最近では、インターネットを活用した情報発信も積極的に推進。その中心となるのが、同協会が企画・運営するWebサイト「FEEL成田」です。

2003年にオープンした同サイトは、成田市の観光・イベント情報をはじめ、ホテルやレストラン、ショップ情報なども満載。日本語だけでなく、外国人観光客向けに英語、韓国語、中国語のページも用意されており、アクセス数も年間240万以上のページビューを有しています。成田市観光協会 専務理事の神宮氏は、「多言語対応の効果もあって、ここ数年、海外からのアクセス数も年を追うごとに増加しており、海外旅行者入れ込みに貢献しています」と話します。

成田市観光協会公式サイトとして、2003年から運営が開始されたWebサイト「FEEL成田」。「F(Festival:祭りの街 成田)、「E(Entertainment:賑わいに溢れる街 成田)」、「E(Environment:豊かな自然に恵まれた街 成田)」、「L(Locality&Lifestyle:地域に根ざした生活を尊重する街 成田)をコンセプトに充実した多彩なコンテンツを提供。近年では年間240万ページビューを有している

増加する外国人旅行者の受け入れにWi-Fi環境を整備

成田市観光協会は、国内の観光客のみならず、増加を続ける海外からの観光客の満足度をさらに向上させるため、インフラのさらなる整備も進めています。中でも急務とされていたのが、Wi-Fiを使って、誰もが簡単にネットワークにアクセスできるようにする公衆無線LANサービスの提供でした。そして、その実現にあたり今回導入されたのが、銚子インターネットより提案されたバッファローのWi-Fi商品です。

一般社団法人 成田市観光協会

1984年8月一般社団法人認可取得法人設立、約450の加盟団体により構成される専門委員会を中心に運営される。国際観光都市「なりた」の競争力をさらに高めるため、年間を通して季節に応じた各種催事の企画と運営、新しい観光コンテンツの開発を推進。賑わいに溢れ、魅力的で集客力の高い観光地づくりを目指している。

所在地

〒 286-8585 千葉県成田市花崎町760

電話

0476-22-2102(事務局)

目標・課題

観光客のスマートデバイスの利用増に伴いWi-Fi環境が必須に

通信事業者等との契約や面倒な設定が不要なWi-Fi接続の実現

インターネット接続だけでなく観光情報のプッシュ配信も不可欠

国際観光都市としてWi-Fi環境の整備が課題に

国際観光都市として人気を集めていく中で
さらなる外国人観光客の来訪を促進するため
施設内だけでなく、参道など、街中の
どこからでもWi-Fiが利用できる環境が求められていた

公衆無線LANサービス導入の理由について神宮氏は、「海外からの観光客が増え続ける中で、『Wi-Fiを使えない』というクレームが外国人旅行者から頻繁に寄せられるようになっていたのです」と、説明します。最近ではスマートフォンやタブレットの普及と相まって、施設や店舗内だけでなく、成田山参道を散策中にスマートデバイスを使ってインターネットにアクセスし、地域の情報を調べる観光客の姿が多数見受けられるようになっていたといいます。

「そうした中で、日本人の観光客であれば通信事業者のサービスを使えますが、国内通信事業者と契約をしていない外国人観光客は利用できません。『他国の都市では自由にWi-Fiが使えることが多いのに、なぜ成田市では使えないのか』との声に対して、国際観光都市としてこれからも成長を続けていくためにも、公衆無線LANサービスの導入が不可欠と考えていたのです」(神宮氏)

面倒な設定は不要、誰もが簡単に使えるWi-Fi環境を目指す

このような背景から公衆無線LANサービスの提供に向け、成田市観光協会では具体的な検討を開始します。そこで掲げられた要件は、「通信事業者との契約や、面倒な設定を行うことなく、誰もが簡単にWi-Fiを使えるようにする」ことでした。

神宮氏は、「国内通信事業者との契約が不要で無料で使えるだけでなく、実際にWi-Fiを利用するに際してメールでの利用登録や認証、さらにはパスワード入力なども不要にするなど、誰もが簡単に使えるようにしたいと考えていました。設定が面倒だと、結果的に使ってもらえないサービスになってしまうからです」と説明します。

エリア情報のプッシュ配信も必須条件に

公衆無線LANサービスの導入にあたって掲げられたもう1つの要件が、積極的な地域情報の発信でした。

「単にWi-Fiによるインターネットアクセス環境を提供するだけでなく、成田市を訪れた旅行者がより一層観光を楽しんでもらえるよう、さまざまな情報を観光協会側からプッシュ配信できるようにしたいと考えました。具体的には、Wi-Fi 接続時に、先に述べたFEEL成田を最初に表示させる、というものです」(神宮氏)

さらに利用者の利便性を高めるため、Wi-Fi 接続を行った場所に応じてFEEL成田のトップ画面を柔軟に変更、周辺エリアの店舗やレストラン情報を提示させられるような仕組みを実現することも、導入要件の優先事項として挙げられました。

スマートデバイスによるインターネット接続だけでなく、周辺地域の様々な情報をプッシュ配信可能な仕組みの実現も要件として掲げられた

解決策

フリースポット導入キット「FS-HP-G300N」を採用

接続エリアに応じた情報配信をポップアップテクノロジーで実現

セキュリティ対策もオプション機能で対応

導入商品

フリースポット導入キット
Wi-Fiアクセスポイント

有害サイトフィルタリングサービス

必要な機能をすべて1台に備えたバッファロー商品を選択

市内各所のホテル、ショッピングセンター、レストラン、店舗など
約70ヵ所に設置された「FS-HP-G300N」。
施設内だけでなく参道での通信もカバーできるよう、
あらかじめ設定したエリアごとに配置されている

これらの要件を掲げ、成田市観光協会は本格的な公衆無線LANサービスの提供を目指し、複数の通信事業者の提案やWi-Fi商品を比較検討します。そして最終的に選択されたのが、銚子インターネットが提案したバッファローのWi-Fi商品でした。

「当初は通信事業者が提供する公衆無線LANサービスも検討しましたが、導入/運用コストが高額であったことや、接続時に認証が必須であるなど、私たちが求める要件を満たしていませんでした。一方、他社のWi-Fi商品も銚子インターネットと共に検討しましたが、エリアごとに表示させる情報を変える仕組みを実現するためには、複数の機器を組み合わせなければならず、コストが増加するだけでなく構成も複雑となってしまうことが懸念されました。対して、私たちが掲げた要件をすべて1台で満たすことができたのは、バッファローのWi-Fi商品だけだったのです」(神宮氏)

提案を担当した銚子インターネット取締役の土手祐典氏も、「このような機能性に加え、価格面でも優位性を持っていたことや、これまでの案件を通じたバッファロー商品の耐障害性の高さ、そしてサポート面における迅速かつ手厚い対応なども採用の理由になりました」と説明します。

ポップアップテクノロジーでエリアごとに情報を配信

今回、バッファロー商品が選択された大きな理由の1つとなったのが、「ポップアップテクノロジー」です。これは、Wi-Fiクライアントの初回アクセスに対して、あらかじめ登録されたURLを表示させる機能であり、FEEL成田の情報ページを表示させたい、という要件を実現するにあたって不可欠なものでした。 今回のケースでは、エリアを6地域に分類。それぞれのエリア内にある複数の施設に設置されたWi-Fiアクセスポイントに対して個別のIDを割り振るとともに、そのIDと紐づけられたURLのWebページを表示させるようにしています。

「ポップアップテクノロジーの活用により、FEEL成田の表示内容を変えるだけでなく、『駅前であれば成田山までの道のり、成田山の近くであれば駐車場の場所』、などきめ細かい地域周辺情報の配信も行えています。さらにIDには緯度経度情報も紐づけられており、『現在地から一番近い鰻屋さんは、このお店』といった情報も表示も可能となっています」(神宮氏)

オプションのセキュリティ機能で不正利用も遮断

一方、安全な公衆無線LANサービスを提供していくにあたっては、セキュリティ機能が必須となります。特に今回のケースでは、利用に際して事前登録やID/パスワードを用いないため、不正や悪事に利用したユーザを突き止めることが困難となります。そこで、悪意のある利用を遮断するため、オプション機能である「i-フィルター for FREESPOT」も合わせて導入されました。i-フィルター for FREESPOTは、インターネット利用時にあらかじめ指定したカテゴリのWebサイトを表示させない有害サイトフィルタリングサービスです。「迷惑メール送信の踏み台となるサーバへの接続をブロックするなど、観光に必要な情報だけにアクセスできるようにしています。i-フィルター for FREESPOTはライセンスを有効にするだけで使えるので、導入も簡単に行えました」と土手氏は話します。

アクセスフリー成田 システム構成

効果

外国人旅行者からのクレームはゼロに

地域ガイドとしてWebサイトの利用が増加

業務効率化で、旅行者へのより手厚いサービスの提供を目指す

主な観光スポットをカバーする公衆無線LANサービスを実現

2014年4月から本番運用が開始された公衆無線LANサービスは「アクセスフリー成田」と名付けられ、地域の観光ガイド情報やインターネット接続を提供しています。現在、市内約70箇所のホテルや飲食店、観光地、店舗、公共施設等に「FS-HP-G300N」が設置されていますが、端末とWi-Fiアクセスポイント間の通信速度は最大300Mbps(規格値)に対応していることから、1台のアクセスポイントで半径約20mのエリアをカバー。施設内だけでなく施設外も含めた、成田市の主な観光スポットにおいて快適に利用可能な公衆無線LANサービスが実現されています。

神宮氏は、「サービス開始後は『Wi-Fiが使えない』といった外国人観光客からのクレームはまったくなくなりました。実際、街中ではスマートフォンを使ってインターネットにアクセスする観光客の姿が多数見受けられるようになっています」と話します。また、アクセスフリー成田を経由したFEEL成田の外国語ページへのアクセスも急増しているなど、公衆無線LANサービスの導入効果は数値に見えて表れています。

公衆無線LANサービスの開始で、FEEL成田の利用シーンも拡大

一方、成田市在住の方が観光客から道案内や地元の美味しい飲食店の情報を求められた際に、スマートフォンでアクセスフリー成田に接続、FEEL成田を表示させて案内を行う、といった場面も多々見受けられるようになっているといいます。

神宮氏は、「FEEL成田は継続的なコンテンツの拡充により、単なる情報提供サイトではなく、いまや観光情報データベースとして機能しています。このような情報提供基盤の拡充に加え、アクセスフリー成田による柔軟なWi-Fi接続が可能となったことで、これまで頻繁に寄せられていた成田市観光協会への問い合わせ電話が減るなど、業務効率化にもつながっています。電話応対の時間が減ったことで、さらなる観光促進のための企画立案など他の業務に充てられるようになったことは、IT化がもたらした効果の一例だと考えています」と評価します。

テクノロジーの進化を見据え、さらなる情報提供基盤の強化を目指す

アクセスフリー成田が利用可能な施設には、写真のステッカーが掲示されている

今回、成田市観光協会は、「観光客へのおもてなしの心」に賛同する成田市内の事業者の協力により、Wi-Fiアクセスポイントの設置場所とインターネット回線を提供していただくことで、利便性の高い公衆無線LANサービスを実現しました。
 これからも神宮氏は、FEEL成田における観光情報の拡充とともに、ITを活用した観光振興の促進を図っていきたいと意欲を見せています。

「バッファローのWi-Fi商品の導入により、現時点では最良の仕組みを実現できたと考えていますが、今後もテクノロジーに進化に応じて、新しい取り組みを行っていくことが求められるでしょう。例えば、最近話題のウェアラブルコンピューティングなど、さまざまな新しいテクノロジーが登場し、世の中に浸透していった際に、それらをいかに観光の促進に役立てていけばいいのか。バッファローには優れた商品の提供に加え、将来を見据えた新しいアイデアを具現化するような提案も期待しています」と、神宮氏は強調しました。


取材後記

近年、旅先において、書籍のガイドブックではなく、スマートフォンを片手に現地の観光情報を調べる旅行者が増えています。また、旅先の風景や食事などを撮影、その場でSNSにアップすることも当たり前のようになりました。そうしたスマートデバイスの快適なアクセスを可能とする公衆無線LANサービスの提供は、これからの観光地にとって不可欠なインフラとなることは間違いないでしょう。


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