増築で構造が複雑化した建物を含む3棟を有する保育園。数種類のWi-Fi機器を用途に合わせて導入し、園内のどこでも確実に利用できるWi-Fi網を確立
社会福祉法人 八代ひかり福祉会 八代ひかり保育園 様
社会福祉法人 八代ひかり福祉会 八代ひかり保育園(以下、ひかり保育園)では、「ひかり保育園」「ひかり夜間保育園」「ひかり児童館」と3棟ある園内施設のどの場所でも途切れず安定して利用できるネットワークを確立するため、複数のWi-Fi機器を導入。屋外でも使用可能なモデルなどもそれぞれ効果的に配置して、園内全域をカバーできる通信環境を実現しました。
取材協力
西崎通信建設株式会社
西日本電材株式会社
概要
園児240名、保育士70名の保育園。小学生の学童クラブや夜間保育園も併設
複数の家庭用Wi-Fi機器で構築されていた不安定なネットワークを改善
無線LANアクセスポイントを使い分け、Wi-Fiが届きにくい場所もカバー
240名の園児を擁する八代市最大規模の保育園
八代ひかり保育園は昭和45年に設立され、今年で48年目を迎える八代市で最大の保育園です。設立当初60名だった園児は、現在240名超に増えています。平成7年には小学生の学童クラブであるひかり児童館を設置し、さらに平成14年にはひかり夜間保育園も開設。これらにともない保育士も増員されて現在は70名近くになり、すぐ隣にある小学校と変わらない規模の保育園になっています。
保育士不足が叫ばれる昨今ですが、ひかり保育園には、下は20歳から上は75歳までと幅広い年齢層の保育士が揃っています。「きっと居心地のいい職場なんでしょうね」と園長の木浦氏は語ります。「おばあちゃん、ひいおばあちゃん世代のベテラン保育士が、孫の世話をしているみたいに優しく子供たちと接していて、園の中もとても和んだ雰囲気になります」。
毎日つける保育日誌がネットワークの不具合で切れてしまう問題
そんなひかり保育園のPC導入は比較的に早く、13年ほど前から各教室にノートPCを設置していました。保育日誌などは手書きではなく、必ずPCで記録するのがルールになっています。しかし、それまで利用していた家庭用Wi-Fi機器を使ったネットワークは不安定で、書き込み中の日誌が消えてしまうという問題を抱えていました。
そこでネットワークの管理を担当している西崎通信建設株式会社(以下、西崎通信建設)に相談し、バッファローの無線LANアクセスポイントを導入。数種類の無線LANアクセスポイントをエリアに応じて使い分けて、保育園、児童館、夜間保育園のすべての教室で安定したWi-Fi環境を実現しました。
社会福祉法人 八代ひかり福祉会 八代ひかり保育園
八代ひかり保育園は1970年に設立された、八代市で最大規模の保育園。たくさんの子供たちを受け入れるため、これまで増床、増築を重ねている。広い敷地の中には学童クラブのひかり児童館、さらに夜間預かり施設のひかり夜間保育園も設置されており、保育士は70名体制で子供たちの成長を見守っている。
目標・課題
子供たちの登園管理や保育日誌をデータベース化して共有。しかし通信の不具合が頻発
増築され構造が複雑になった建物でもWi-Fiの電波を行き渡らせる対応
不安定なWi-Fi環境が保育士の業務ストレスに
ひかり保育園ではほぼすべての教室にPCが設置されており、現在では20台程度が稼働しています。これを使用するのは保育士です。子供たちの登園管理や保育日誌、病児保育のためのメモなどを各保育士が記録してデータベース化し、情報を共有することで、担当でない保育士でも現在の園児の状態をすぐに把握することができるようにしていました。
しかし、現在の保育日誌にはWebベースで構築された保育管理システムを使用しており、保育士が日誌を書いている途中でネットワークが切れ、途中まで書いた内容が消えてしまうという不具合が頻発していました。園児たちが帰宅したあと、1日の最後に記録した日誌が途中で消えてしまうことは、保育士にとっては非常にストレスになっていました。ネットワークがつながらないときは、ノートPCを持って廊下に出て使ったり、どうしてもダメなときは、通信が安定する事務所まで移動して作業をすることもあったといいます。
増築による建物構造がWi-Fi環境の妨げに
ネットワークが安定しなかった原因は、運動場をまたいで建つ3つの施設に距離があること、増築によって建物の構造が複雑になってしまったこと、そして、当時利用していたWi-Fi機器では安定した通信環境を構築できなかったことにありました。施工前は、ホールに設置した11n対応無線LANアクセスポイント「WAPS-APG600H」と家庭用Wi-Fi機器を組み合わせて使っていましたが、設置場所が悪かったこともあり、十分な効果をあげられませんでした。
園で使っているシステムはWebベースの保育管理システム。Webベースのデータベースのため、ネットワーク接続が切れると入力し直しになってしまう
解決策
複数台の無線LANアクセスポイントを設置場所に合わせて使い分け
施設内だけでなく、施設の外からも室内にWi-Fiを届かせるよう工夫
導入商品
園全域で使えるWi-Fiネットワークの構築
これらの問題を解決するために、木浦氏は西崎通信建設の若村切人氏に相談しました。「電波は目にみえないものなので、専門の方にみてもらおうと考えました」と語る若村氏は、バッファローに相談して現場環境の調査を依頼しました。その結果、広い多目的ホールには比較的多くの端末の通信をカバーできる「WAPM-1750D」、教室など一般的な場所には「WAPM-1166D」、そして、園庭と向かい側の夜間保育園の一部の接続のために、屋外でも設置可能な「WAPM-1266WDPR」と、3機種を選定。デモ機を使って検証を実施し、すでに導入されていた「WAPS-APG600H」も含めて7台を設置することになりました。すべての無線LANアクセスポイントでSSIDを統一し、園内同一のシームレスなネットワークに接続できるようにしました。
壁越え・窓越えを狙った無線LANアクセスポイントの設置
何度か増築をしたことで複雑な構造になっているひかり保育園で難しかったのは、届きにくい部屋にどうやって無線LANアクセスポイントの電波を届けるかということでした。例えば「WAPM-1266WDPR」は園庭だけでなく、設置した壁の内側の部屋にも電波が届きます。「棟の一番南側がちょっと複雑な作りなので、屋内に入れた無線LANアクセスポイントでは電波が入りません。そのため、外に一つ設置して、グラウンドの方や、その真裏の教室にも壁を越えて通信がつながるようにしました。さらに、向かい側の夜間保育園の一部もこの無線LANアクセスポイントの電波を受信できます」と若村氏。ほかにも、電波状況が一番安定しなかった奥の部屋は直線的な配線ができなかったため、外から回り込むような形で配線。PoEを利用できるほぼ限界の距離だったこともあり、一つ手前の部屋から窓越しに電波を届かせるよう工夫しました。
PoEにすることの利点
無線LANアクセスポイントで気をつけている点は、子供たちの手の届かないところにつけること。そのため、それぞれの無線LANアクセスポイントはできるだけ高い場所に設置しました。LANケーブルから無線LANアクセスポイントに給電できるPoEを使って配線もケーブル一本でまかなっています。PoEの利点としてもう一点、AC電源の配線が必要なくなるため、壁に穴を開けるなどの面倒な工事が不要になることが挙げられます。LANケーブルはモールやダクトホースで配線できるため、開園中の施工でも園児たちのお昼寝時間を邪魔せず、静かに作業を行うことができました。
効果
園内全域で快適なWi-Fi環境が実現
保育士が子供たちから目を離さず保育日誌を記録できるように
園の敷地内で安定したWi-Fi環境
施工完了後、園内の教室のどの場所でも安定したWi-Fi環境が実現しました。それまでストレスだった保育日誌の記録も、ネットワーク環境が安定したことで快適に行えるようになりました。また、以前はネットワークが途切れない場所で保育日誌を書くために、子供たちに背を向けた形でPCを使わなければならないこともありましたが、今ではPCを部屋の奥に設置して子供たちにしっかり目を配りながら利用できるそうです。「とにかくつながりやすくなったというのが一番のポイントですね」と木浦氏。保育士たちも使いたい場所でPCを使えることを喜んでいるそうです。
今後はタブレット利用や増設も検討に
ネットワーク環境が整ったことで、今後はタブレットの利用なども考えていきたいとのことです。「今は写真もデジカメなので、タブレットで撮った写真を直にWebにアップできるような形にしていくのもいいかなと考えています。色々発展性はありそうです」と木浦氏は語ります。また、近々学童用の体育館のような施設を作る予定があり、そちらでもWi-Fi環境を構築することを検討しています。これからも保育士の要望を聞いて、積極的に環境の整備や業務の向上に取り組んでいく予定です。
取材後記
園で遊ぶ子供たちは元気に園庭内や児童館の中を遊びまわっていました。人見知りすることなく大人にも積極的に話しかける様子は、都会の子供たちよりものびのびしているようにも感じられます。そしてお昼寝する園児たちを見守る保育士さんたちの温かい目。子供たちを大切に育てていくための環境を支えるICTの導入はこれからも続いていきそうです。