安定した同時通信を提供するバッファローの無線LANアクセスポイントで「ジグソー学習」への動画コンテンツ活用が可能に。より理解度の高いアクティブ・ラーニングを実施

仙台市立六郷小学校 様

仙台市立六郷小学校 校長 菅原弘一氏(以下、菅原校長)

仙台市立六郷小学校(以下、六郷小学校)では、平成29年8月に、一部の教室と体育館、運動場の無線LAN化を実施。教室と体育館に無線LANアクセスポイント「WAPM-2133TR」を、運動場に無線LANアクセスポイント「WAPM-1266WDPR」を設置するとともに、40台のタブレットを導入し、タブレットを活用した授業を行える環境を整えました。仙台市教育委員会のアクティブ・ラーニング普及支援事業拠点校として、また仙台市教育センターが認定する自主公開校として、タブレットを活用したアクティブ・ラーニングを推進し、授業の質向上、児童の学力向上を目指しています。

概要

140年以上にわたり、地域とともに歩んできた公立小学校

教育委員会、教育センターとの連携により、ICTを活用した教育を推進

農作業体験学習の収穫を祝い、地域住民に感謝を伝える「若あゆ祭」

玄関に飾られている卒業制作のレリーフ。
若あゆ祭で実施されている様々な催しが描かれている

六郷小学校は、宮城県仙台市若林区にある公立小学校。明治6(1873)年の開校以来140年以上にわたり、地域の児童の教育を担ってきました。「地域とともに歩む学校」を目指し、あいさつ運動をはじめ、地域住民との交流を大切にした活動を推進。読み聞かせ、昔遊びや、防犯、1年生の生活・学習サポートなど、地域ボランティアとの交流の機会も多く、農家の協力のもと、稲作などの農作業体験学習も実施しています。収穫を祝う「若あゆ祭」では、お世話になった方々を招き、黒潮太鼓、おみこしパレード、模擬店などの催しを通して交流を深めています。

学力向上の基盤となる、自分づくり教育、道徳教育、健康教育、表現・コミュニケーション教育、図書館教育などの充実を図り、自ら学び、心豊かにたくましく生きる児童の育成を目指しています。

研究活動支援の一環として、タブレットと無線LANアクセスポイントを調達

2016年に六郷小学校に赴任した菅原校長は、児童の学力向上を目指す新たな取り組みとして、タブレットを活用したジグソー学習の実施を構想していました。しかし六郷小学校には無線LAN環境がなかったため、実施は不可能でした。

ICTを活用した教育に詳しい菅原校長の就任を機に、六郷小学校は、仙台市教育委員会のアクティブ・ラーニング普及支援事業の拠点校となり、仙台市教育センターの自主公開校にも認定されました。仙台市教育センターと相談する中で、研究活動支援の一環として、タブレットと無線LANアクセスポイントの貸与を受けられることになり、教室、体育館および運動場の無線LAN化が実現。教室での授業のみならず、体育など様々な教科でタブレットを活用できるようになりました。

仙台市立六郷小学校

明治6(1873)年に、飯田小学校として開校。明治10(1877)年から3年間「至誠小学校」と改称したことから、「至誠(まことをみがく、まことをちかう)」が校是となり、現在に至るまで脈々と受け継がれている。平成29(2017)年に、東日本大震災で被災した仙台市立東六郷小学校を統合。2018年3月現在の在籍児童数は711名。「安心で安全な学校」「楽しく豊かに学べる学校」「地域と共に歩み前進する学校」を目指し、地域の児童教育に取り組んでいる。

所在地

〒984-0834 宮城県仙台市若林区六郷11-11

電話

目標・課題

新たなICTを活用した教育の構想「ジグソー学習へのICT応用」

ICTを活用した教育の推進に携わってきた菅原校長の就任

菅原校長は、2013年まで仙台市立吉成小学校で教頭を務め、パソコンを使った復興応援雑誌の制作を学習に採り入れるなど、ICTを活用した教育に力を入れてきました。その後も文部科学省生涯学習政策局情報教育課、仙台市教育委員会に勤務し、小中学校の情報化推進に取り組んできました。

2016年度に六郷小学校に赴任し、数年ぶりに現場に戻った菅原校長には、新たなICTを活用した教育の構想がありました。それは「ジグソー学習」へのタブレット活用です。「『ジグソー学習』とはグループ学習の一種で、一つの班の中だけで議論をするのではなく、各児童が担当課題ごとに出先の会議(エキスパートグループ)に参加し、そこで得た情報を持ち帰り、自分の班(ジグソーグループ)で再共有することによって理解を深める学習方法です。そこにタブレットを応用し、動画やインターネットを活用することで、もともと紙の教材で行っていた『ジグソー学習』がより理解度の高いものになるのではと考えたのです。」(菅原校長)

大学や教育センターの協力のもと新たなICT環境を整備

仙台市教育センターとの連携により、
タブレットと無線LANを導入した経緯を説明する菅原校長

菅原校長は、新たな学習方法を実践できる環境を早急に整えなくてはならないと考えました。しかし、当時の六郷小学校には十分な台数のタブレットや無線LANがなく、まずはICT環境の整備が必要でした。

仙台市では、2017年度から2021年度までの5年間で、すべての市立小中学校を対象に、タブレットの導入や無線LAN整備など、最新の小学校学習指導要領の趣旨に合わせたICT環境整備が予定されています。六郷小学校への設置予定は2019年度で、菅原校長の構想を実現するためには、あと2年待たなくてはならない状況でした。

しかし市の計画とは別に、六郷小学校にもう一つのチャンスが訪れます。仙台市教育センターとの連携による「自主公開」事業の開始です。

「自主公開というのは、日常の校内研究を公開し他校に提供する代わりに、研究に対する指導や助言を受けたり、研究費の支援を受けたりできる制度です。研究活動支援の一環として仙台市教育センターからタブレットを貸し出してもらえることになりました。合わせて校内無線LANの整備にも着手し、まず手持ちの無線LANアクセスポイントを使って、構想している動画コンテンツを活用した「ジグソー学習」が可能かを試してみました。しかし複数のタブレットで一斉に動画を再生する際に安定せず、満足のいく結果は得られませんでした。そんな事情を仙台市教育センターに相談する中で、最適な無線LANアクセスポイントを新たに選定することも許可されました。」(菅原校長)

解決策

普通教室、特別教室、体育館に「WAPM-2133TR」、運動場に「WAPM-1266WDPR」を設置

導入商品

11ac/n/a & 11n/g/b同時使用
法人様向け
無線LANアクセスポイント

11ac/n/a & 11n/g/b同時使用
防塵・防水耐環境性能 法人様向け
無線LANアクセスポイント

40台のタブレットで同時に動画再生ができる無線LAN環境を構築

移動式の無線LANアクセスポイントを導入している学校もありますが、移動式の場合、都度使用前に設置と配線を、使用後に片付けを行う必要があります。菅原校長はこれまでの経験から、移動式の共有機器は教員が使いづらく、使用頻度が上がらないと考えました。また、タブレットの様々な活用シーンを想定し、普通教室に加え、多目的教室、体育館、理科室、音楽室等の特別教室、さらに運動場への設置を検討しました。すべてに常設となると1台あたりが高価な商品は採用できません。

性能面では、1クラスの児童全員のタブレットが同時に動画コンテンツをスムーズに再生できることを条件に検討。主要各社の商品を比較・検討した結果、教室・体育館には、通信のバラつきを抑える「公平通信制御機能」を搭載し、「バンドステアリング機能」搭載で5GHz帯2つと2.4GHz帯1つの計3つの帯域に負荷を自動分散するバッファローのトライバンド無線LANアクセスポイント「WAPM-2133TR」が、運動場には防塵・防水性能に優れた耐環境モデル「WAPM-1266WDPR」が採用されました。

また仙台市内には気象レーダー施設があり、「DFS障害」による授業中の通信切断の懸念もありましたが、この2機種はいずれもDFS障害回避機能を搭載しているため、近隣の気象レーダー等による電波干渉が起きた場合に、瞬時にチャンネルを切り替えて、安定した通信を継続できる点も採用のポイントだったといいます。

DFSとは

「Dynamic Frequency Selection(動的周波数選択)」の略。5GHz周波数帯の「W53」、「W56」で気象・航空レーダーなどの干渉があった場合、アクセスポイント側が干渉のないチャンネルに退避する仕組み。法律で義務付けられ、無線LANアクセスポイントに必ず搭載されている。干渉した場合、無線LANを60秒間停波して移動予定のチャンネルがレーダー波と干渉しないかを監視する必要がある。

各教室と体育館には、トライバンドで安定した通信が可能なWAPM-2133TRを設置

運動場には、耐環境性能に優れたWAPM-1266WDPRを設置(取材時は1階教室の窓側に仮設置。運動場に面した校舎軒下へ設置予定)

体育館のWAPM-2133TRに40台のタブレットを接続した際の通信状況。「バンドステアリング機能」が自動的にW52・W53とW56に割り振ることで混雑をなくし、安定通信を確保していることがわかる

効果

「ジグソー学習」へのタブレット活用でより理解度の高い授業に

体育の授業への動画コンテンツ活用で投球フォームの確認・矯正が容易に

教員が新しい授業の開発に取り組める環境づくり

ジグソー学習で、情報収集・共有・プレゼンテーション力を鍛える

ジグソー学習で、持ち帰った情報をグループのメンバーに説明する児童。
タブレットを活用することで、資料を活用するスキルや
プレゼンテーション力の向上につながるという

2017年度の夏休みに機器の設置が完了。9月に行われた公開授業で、タブレットを活用したジグソー学習が実施されました。

「公開授業では、5年生の社会科の授業で、『日本の食料自給率は低いままでよいのか?』というテーマについてのジグソー学習を行いました。児童は、「輸入が支える豊かな食生活」「食料の輸入増加と日本の農業・漁業」「大量の輸入と食べ残し」「フードマイレージ」の4つの担当に分かれ、エキスパートグループに参加します。そこでインターネットを活用しながら情報を集め、画面をキャプチャするなどして情報を共有します。その後ジグソーグループに戻り、持ち帰った情報をグループ内で発表します。タブレットを使うことで、情報の収集・共有をよりスムーズに行えますし、情報の編集やプレゼンテーション力も向上します。児童の学習意欲も高まりました。」(菅原校長)

しかし、最初からうまくいったわけではないと菅原校長は言います。「初回の授業では教員もまだ要領がつかめていませんでしたし、学習の進め方やタブレットの使い方を一から説明しながらの授業で、参加者の中には否定的な感想を持つ先生もいました。しかし、2回目、3回目と繰り返すうちに、児童が学習の趣旨を理解し、自主的に学習を進めるようになり、アクティブ・ラーニングの効果が表れ始めました。教員も手応えを感じ、さらに質の高い授業を行おうと、タブレット授業に対する意欲が高まっています。」(菅原校長)

タブレットの動画機能を活用して、自分のフォームと解説動画を比較

六郷小学校では、体育の授業でもタブレットを活用しています。自分の体の動きを動画撮影して確認し、手本の解説動画を見て正しい動きを理解することにより、正しい体の使い方の理解につなげようという試みです。「運動をする時には、自分の体が思った通りに動いているかどうかが重要です。普段は見ることができない自分の動きを動画で確認し、それを解説動画と比べることで、初めて自分の欠点を理解することができ、それが動きの改善に役立ちます。」(菅原校長)

ボールの投げ方を身に付ける授業では、4名ほどの班に分かれて、複数台のタブレットでお互いの投球フォームを撮影。学校向けWebサービス「NHK for School」の解説動画と、自分のフォームを比べた後、再度投球フォームを撮影し、改善されたかどうかを確認していました。撮影という役割ができることで、他の児童が投げる様子をじっくり観察するようになり、それもフォームの改善に役立っているようです。

ボールの投げ方を身に付ける体育の授業の様子。お互いに撮影し合ったり、解説動画と比較したりすることで、運動が苦手な児童も楽しみながら参加できている

ICT環境を整備して、教員の授業開発を後押ししたい

「おかげさまで、まだ一部ですが無線LAN環境が整い、タブレットを活用したアクティブ・ラーニングを実施できるようになりました。今後は自主公開校として、その効果を内外にアピールしながら、児童の学力向上に役立てていきたいと思います。いずれは全教室で無線LANが利用できるようになり、タブレットも3クラスあたり40台ぐらいに増えるのが理想ですね。動画撮影や動画コンテンツの活用など、学習への映像の利用は観察や発見に役立ちます。また教員の皆さんは、これはいいな、使えそうだなと思ったら、それを活用する方法を一生懸命考えます。特に若い教員には、最新のICTを活用できる環境を提供して、新しい授業をどんどん開発していってもらいたい。そのためには、やはりインフラの整備は不可欠だと思います。」(菅原校長)


取材後記

菅原校長は、これまでの教育の課題の一つとして、文章の読み書きが苦手な児童が基礎学習でつまずいてしまうと、学習意欲が低下してしまう点を挙げておられました。動画を使うことによって、そうした児童も積極的に授業に参加できるようになり、それが学習意欲の向上につながっている、という菅原校長のお話を伺い、ICTを活用した教育とアクティブ・ラーニングの効果を再認識しました。より使いやすく安定した無線LAN環境をご提供することが、より多くの児童の学習意欲の向上の一助となれば幸いです。


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