市内3校の全教室に無線LANアクセスポイントを設置しタブレットを導入。ICTを活用した授業で生徒の参加意欲を向上

赤穂市教育委員会 様

赤穂市教育委員会では2016年8月、ICTを活用した教育推進の一環として、市内の中学校3校の全教室に、33台の無線LAN(Wi-Fi)アクセスポイント「WAPM-1750D」とネットワーク対応HDMI変換ディスプレイアダプター「LDV-HDA」を導入しました。そのうちの1校、赤穂市立赤穂東中学校では、古くなったデスクトップPCに替えて40台のタブレットを導入。各教室のテレビにタブレットを接続するための「LDV-HDA」を設置することで、タブレットを活用した授業を行うための環境を整えました。二学期から開始した新しい授業スタイルは、すぐに多くの効果を見せており、生徒の反応も上々です。12月には同じく赤穂市内のすべての中学校・小学校の全教室に、「WAPM-1750D」、「LDV-HDA」およびタブレットを設置予定。赤穂市全域でICT教育のための環境整備を進め、授業品質の向上に努めています。

赤穂市立赤穂東中学校 教諭 下村翔氏(以下下村先生)
校長 尼子勝義氏(以下尼子校長)
主幹教諭 三木秀彦氏(以下三木先生)

赤穂市教育委員会 指導課 田中豊史氏・澁谷文江氏

取材協力

株式会社システムリサーチ

概要

自ら「気づき・考え・行動する」生徒を育成

デスクトップPCからタブレットへ

自主性・積極性とともにやさしさと思いやりの心を育む実践教育

赤穂東中学校は、赤穂浪士で知られる兵庫県赤穂市の南部、西播磨地区に位置する市立中学校です。校訓は「自主・協同・奉仕・明朗・遵法」。“「気づき・考え・行動する」生徒の育成”を目標に、いじめや暴力のない笑顔あふれる学校を目指しています。学校行事では、地域住民に向けてのあいさつ運動、“あったかいエピソード”の募集・掲示、全校生徒が参加する大縄大会などの様々な行事を、生徒たちが自ら企画し運営。幼稚園・保育所・デイサービスセンターを訪問しての交流、近隣の海浜清掃、関西福祉大学での福祉体験学習などの学外活動にも積極的に取り組んでおり、自主性・積極性とともにやさしさと思いやりの心を育むための教育を実践しています。

平成25年度の体育祭閉会後に生徒全員で作ったグラウンド一杯の円陣は、「心の円陣」と呼ばれ、赤穂東中学校を象徴するキャッチフレーズとして語り継がれている

PC更新の機会を利用して、無線LANアクセスポイントとタブレットを導入

赤穂東中学校では、そうした心の教育とともに、次世代に活躍できる人材を育成するためのICT教育にも力を入れてきました。しかしPCの更新には多額の予算がかかるため、授業で使用するPCは経年とともに徐々にスペック不足に。ノートPCやタブレットなどのモバイル端末が主流となっている最新のICT教育を実施できない状況が続いていました。

今回、6年ぶりに巡ってきたPC更新の機会を利用して、無線LANアクセスポイントとタブレットを導入。同時にテレビとタブレットを無線LAN接続するためのアダプターも導入し、タブレットを活用した授業を行える環境づくりを実現しました。

赤穂市立赤穂東中学校

1947年に赤穂町立赤穂東中学校として開校。1951年に赤穂町・坂越町・高雄村の合併により、赤穂市立赤穂東中学校に改称。2016年の全校生徒数は397名。「自主・協同・奉仕・明朗・遵法」を校訓とし、“高い志を持ち、学ぶ意欲と思いやりの心の充ちる生徒”の育成を目指した学校運営を行っている。

所在地

〒678-0214 兵庫県赤穂市朝日町1番地1

電話

目標・課題

前回の更新から6年以上が経過したデスクトップPC

PC入れ替えの予算で無線LAN・タブレット導入へ

家庭や個人のPC環境に学校の設備が追いつかないジレンマ

数学教室には、電子黒板が導入され、
PCとインターネットを活用した授業が行われていた

赤穂東中学校にパソコン教室が設置されたのは、今から20年以上前。この地域でいち早くPCを活用した授業を開始した学校の一つでした。その後もICT教育に力を入れてきましたが、PCはすでに前回の更新から6年以上が経過。処理速度やグラフィック性能などのスペック不足が顕在化してきました。そこで最新のPC導入のための予算を教育委員会に申請してきましたが、なかなか実施には至らず、年々先送りになっていました。

「昔は、学校には常に最新の視聴覚機器・情報機器が整備されていました。それを生徒が体験して、やがて家庭に広まるという流れがあったのですが、今は全く逆です。家庭や個人が最新の機器を持っているのに、学校の設備が追いつかない。これはなかなか厳しい状況です」と苦笑まじりに話す尼子校長。一般家庭では主流になっているデジタル機器が、学校の授業で使えないことにジレンマを感じていました。

無線LANアクセスポイントとタブレットを導入し、既存の大型テレビを有効活用

そんな中、ようやく予算が措置され、2016年度に40台のPCが導入されることが決定しました。  「通達があったのは昨年の夏頃です。そのときはまだデスクトップ型のPCを導入することになっていて、タブレットを導入するという話は一切ありませんでした」と語ってくれたのは、主幹教諭の三木先生。

「導入が決まったのはありがたかったのですが、ICT教育の主流はすでにタブレット。せっかく新しいPCになっても、今まで通りパソコン教室だけでしか利用できないのではあまりメリットがありません。先生方の意見をとりまとめた結果、PCはタブレット型のものに、そして校内の全ての教室でタブレットからインターネット接続ができるような設備を導入できるよう、再度教育委員会にお願いすることになりました。さらに、当校にはすべての教室に大型テレビが設置されていますから、タブレットや無線LANアクセスポイントと合わせて、無線LAN経由でタブレットの画面をテレビに出力する機器を導入することで、大型テレビを電子黒板の代わりに利用したタブレット授業が行えるようになると考えたんです」

解決策

「WAPM-1750D」選択の決め手は「公平通信制御機能」

各教室のテレビにHDMI変換ディスプレイアダプター「LDV-HDA」を設置

教育委員会のPCに集中管理ソフトウェア「WLS-ADT」を導入

導入商品

法人様向け11ac/n/a、11n/g/b 同時使用 インテリジェントモデル無線LANアクセスポイント

ネットワーク対応 HDMI変換
ディスプレイアダプター

ネットワーク集中管理ソフトウェア

複数台の同時接続・動画再生に強い「WAPM-1750D」を選択

タブレットを導入して各教室のテレビに接続できるようにしたい、という赤穂東中学校の要望を受けて、赤穂市教育委員会は、株式会社システムリサーチに計画の見直しを依頼。依頼を受けたシステムリサーチの玉森さんは、当初の予算内で要望を実現できるプランを作成、提案しました。

「無線LANアクセスポイントには、『WAPM-1750D』を選択しました。40台のタブレットで同時にストレスなく動画再生ができる「公平通信制御機能」には、以前から注目していたんです。この製品ならひとクラス分のタブレットを同時につないでも、表示のバラつきがなくスムーズに授業ができる。それが一番の決め手でした。」

赤穂市教育委員会ではこのプランを基に、赤穂東中学校を含むすべての小中学校への「WAPM-1750D」の導入を決定。2016年の8月に、赤穂東中学校を含む3校33教室の設置工事を実施。12月にはさらに12校111教室に設置予定です。

赤穂東中学校でタブレット授業を実現するためのシステム構築を担当した、
株式会社システムリサーチ 姫路支社の玉森健氏

各教室の黒板の上に設置された「WAPM-1750D」。
40名の生徒が同時接続しても再生の遅延が起きずにスムーズな授業が行えるよう、本製品を選択した

「LDV-HDA」の導入で、より自由度の高いタブレット授業が可能に

各教室のテレビは高い位置に天吊り設置されていたため、タブレットに接続するためのケーブルを頻繁に抜き差しすることは難しい状況でした。そこで各教室のテレビに「LDV-HDA」を設置し、タブレットと同じ画面を無線LAN経由でテレビに表示できるシステムを構築しました。設置には付属のブラケットを使用し、本体をテレビの背面に固定しました。

テレビとのWi-Fi接続が可能になったことにより、授業開始時の準備がスムーズになり、教員がタブレットを持ったまま、自由に教室内を移動して授業を行える環境が整いました。

「LDV-HDA」を、付属のブラケットでテレビの背面に固定。HDMIケーブルをテレビに接続、LANケーブルをWAPM-1750Dに接続することで、タブレットの画面をWi-Fi経由でテレビに表示できる

パソコン教室のプロジェクターにもLDV-HDAを設置

各校に設置した「WAPM-1750D」を教育委員会のPCから遠隔管理

「WAPM-1750D」は、集中管理ソフトウェア「WLS-ADT」に対応しています。そこで教育委員会のPCに「WLS-ADT」をインストールし、各校に設置した「WAPM-1750D」の状況確認・設定変更を一括して行えるようにしました。今後、何らかの理由でトラブルが発生した際も、教育委員会のPCから再起動などの遠隔操作が可能。管理者が学校へ出向くことなく、迅速に授業を再開することができます。

赤穂市立赤穂市教育委員会および赤穂東中学校のネットワーク構成図

効果

ダイナミックな授業で生徒の集中度・注目度が向上

様々な教科でタブレット活用のメリットを実感

校内ネットワークのさらなる可能性

黒板・教材・ノートなどをタブレットのカメラで映してテレビに表示

新たなシステム導入にあたり、システムリサーチでは教職員の代表者を招いて研修会を実施。さらに学校での全教職員向け研修会も実施しました。その後も関心のある教職員が集まり自主的に勉強会を開くなど、タブレット授業の準備を進め、2016年9月から運用を開始しました。

数学の授業でタブレットを活用している下村先生は、「授業で使ってみて、特に便利だと感じるのはタブレットのカメラ機能ですね。黒板や教材、生徒のノートなどをカメラで映して、リアルタイムでテレビ画面に表示できるようになったおかげで、授業の進め方が大きく変わりました」と、すでのそのメリットを実感しています。「解答し終えた生徒のノートを一部だけ映して、問題が解けていない生徒のヒントにしたり、参考になりそうな解答などを撮影して残しておいて、他のクラスの授業に活用したり。わかりやすく、テンポのいい授業が展開できるので、生徒の集中度・注目度が高まりました」

今までは授業に消極的だった生徒が、タブレットをきっかけにやる気を見せるようになり、クラス全員に前向きに取り組む雰囲気が出てきたといいます。

タブレットの画面を大型テレビに映すことで、指導内容を黒板に書いたり消したりする時間のロスがなくなり、授業の進行がスムーズに

タブレットのカメラで手元を映し、リアルタイムでテレビに表示しながら解説。大きな教材を作ったり購入したりする必要がなくなり、授業の準備がしやすくなったという

画面と音声を同期して流すことで授業の流れがスムーズに

数学以外の教科についても、下村先生からお話を伺うことができました。

「国語の授業では、これまで教科書を見ながらCDや先生の朗読を聴くという授業スタイルでしたが、現在ではテレビ画面に文章が表示され、文章と同期して音声を流せるようになりました。難しい漢字や文章表現が出てきたところで一時停止し、教員が解説を加えた後でまた続きを再生するという方法をとることで、授業の流れができ、生徒も集中しやすくなりました。音楽の授業でも、歌詞・音符と伴奏を同期して流せるため、合唱の練習などが進めやすくなりました。テレビを見ながら練習する班、タブレットを見ながら練習する班、楽器を弾きながら練習する班と、班ごとに分かれての練習を行うことで、授業に活気が生まれているようです」。

さらに体育の授業でも、ダンスや跳び箱などの様子をタブレットで撮影し、動画で体の動きをチェックできるようになったとのこと。体育館やグラウンドにはテレビがありませんが、タブレット単体でも様々な利用価値があることを実感しているそうです。

音楽のデジタル教科書を利用して、テレビ画面に歌詞を表示。伴奏に合わせて色のついた部分が移動することで、音楽が苦手な生徒も参加しやすくなった

表示モードの切り替えにより、楽譜を表示することも可能

将来的には教職員の事務作業や校内放送への活用も

文化祭で発表する作品づくりに取り組む科学部員。
設計図の確認などにタブレットを活用している

タブレットそのものへの興味から、積極的に授業に参加するようになった生徒も少なくありません。下村先生は、事前に指名した生徒に予習をさせておき、次の授業で先生役をさせるという授業も行っています。「タブレットを触りたいという理由で、自分から進んで先生役にチャレンジする生徒もいるんです。最近では、授業中に何もできないという子はほとんどいなくなりました」。

12月には各教室に1台ずつのタブレットが設置され、事前に申請をすることなく、各教室で手軽にタブレットが使えるようになります。また現在の40台を教職員が使えるようになれば、授業だけでなく、出席や成績管理などの事務作業にもタブレットを利用できるのではないかと、尼子校長は期待しています。「将来的には、今回構築したネットワークを校内テレビ放送にも活用できないかと考えているんです。これから調査・検討を進めていきたいと思います」。


取材後記

先生方はタブレット授業の効果を説明されながら、一方で、「タブレットはあくまでも補助的な授業支援の道具」ともおっしゃっています。単にタブレットに頼るのではなく、先生方一人一人が活用方法を工夫されていることが、授業品質と生徒さんたちの意欲向上につながっているのだと感じました。現場で伺ったいくつかのご要望をふまえながら、今後もICTを活用した教育に役立つ商品をお届けしていきたいと思います。


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